洗礼の儀式【ティムカット】(公現祭)
ティムカットって、なに…?
毎年、西暦1月19日は、『ティムカット』というお祭りがあります。日本語では『公現祭』と訳されます。
これは、キリストがヨルダン川で『洗礼』を受けたことを祈念するお祭りです。他のキリスト教の宗派では洗礼を祝うことはなく、エチオピア正教独特の行事となっています。エチオピアのクリスマス『ゲンナ』が西暦1月7日ですから、翌日から起算して12日目に当たります。
『ティムカット』自体は1月19日のみなのですが、前後1日ずつも実質仕事は休みとなり、18日~20日まで連続3日(地域によっては21日まで連続4日間)、お祝いは続きます。19日には朝から、白装束に身を包んだ人々が、歌いながら教会から教会へと練り歩きます。また、『洗礼』を祝うものなので、早朝には聖水に見立てた水を人々に振りかけるという儀式があります。さらに、『タボット(契約の箱)』も司祭たちによって運ばれながら街を練り歩きます。『タボット(契約の箱)』とは、3000年前にエチオピアを建国したとされるメネリク1世が、父であるソロモン王を訪ねた際に、イスラエルより持ち帰ったとされる『モーセの十戒の石板』を保管しておくためのものです。
エチオピア正教の教会には、マリア様や天使など、キリスト教に登場する聖人44名の名前がついています。例えば、聖マリアム教会、ガブリエル教会、ミカエル教会、ラファエル教会、など…。これらの教会は、全国に一つではなく、各地域にありますので、例えば『マリアム』の名のついた教会が全国に何か所も存在します。しかし、すべての地域に44教会すべてが揃っているというわけではありません。
エチオピア暦では1か月は必ず30日です。そして毎日44名の誰かを祝福する日として指定されています。例えば、エチオピア暦で毎月12日はミカエルの日、13日はラファエルの日、などです。その地域に、その日祝福する聖人や天使にちなむ教会があれば、その教会に礼拝に行きます。
『タボット』のオリジナルは、エチオピア北部の古都アクスムの聖マリアム教会に安置されているとのことですが、エチオピア正教の教会にはそのレプリカが保管されています。つまり、ミカエル教会にはミカエル教会の『タボット』があり、ラファエル教会にはラファエル教会の『タボット』があります。
『ティムカット』前日18日には、各教会が自分の保管している『タボット』を倉庫よりだし、1か所に集められます。先述の通り、エチオピア正教の教会は44ありますので、たくさんの教会がある地域は、たくさんのタボットが集まります。18日の晩はその広場におかれ、19日(ティムカット当日)になると一斉に練り歩くとのこと…。19日の晩には元あったそれぞれの教会に戻るそうです。
ただし、ミカエルのタボットと、ラファエルのタボットだけは、また広場に戻ります。
なぜなら、ティムカットの翌日である西暦1月20日(エチオピア暦で5月12日)はミカエルの日、
西暦1月21日(エチオピア暦5月13日)はラファエルの日だからです。
20日はミカエルのタボットが練り歩き、晩にはミカエル教会に戻ります。21日にはラファエルのタボットが練り歩き、晩にはラファエル教会に戻ります。ミカエル教会やラファエル教会がその地域になければ、『ティムカット』のお祭りは19日だけで終わります。
こうして、毎日聖人の誰かを祝福する日に指定されているため、一度のお祭りが何日にもわたることになるのです。ちょっとややこしかったですか…?(笑)西暦とエチオピア暦にはズレがありますので、ご容赦ください(><)
それで、ダボットってどんな箱なの…?
私の任地、アルバミンチにおいても、週の頭から少しずつ飾りつけが始まり、行き交う人々も心なしか浮足立っている様でした。街は、エチオピアの国旗のカラー(緑・黄色・赤)の横断幕が張り巡らされ、普段とは違う装いです。
今年のティムカット当日は、日本大使館での賀詞交換会と重なってしまい、実際に参加することはできませんでしたが、『ラファエルの日』にはどうやら間に合ったようです。街には人があふれ、『タボット』の大移動も見ることができました。もちろんこれは、レプリカですが、何とも大きな『十字架』でした。
箱というからには、四角いのかと思っていました…(笑)
しかも、後ろから見ると…。
なんだ、ハリボテ…(笑)